2026.10.07
前回の「スライム(バイオフィルム)ってなに?」では、冷蔵ケースや厨房の排水管に発生する「スライム(バイオフィルム)」の正体について解説しました。水分・栄養・温度という3つの条件が揃えば、スライムの発生そのものをゼロにすることは、事実上できません。
しかし実際には、「排水の詰まりやあふれが繰り返し起きる店舗」と、「スライムはあっても詰まりまでは至らない店舗」があります。この差は、どこから生まれるのでしょうか。
今回は、スーパーマーケットの売場にある冷蔵ショーケース(以下、冷蔵ケース)を中心に、ドレン配管(冷蔵ケースの排水管)の詰まりを防ぐ予防策をご紹介します。
スライムが「発生している」状態と、排水管が「詰まる」状態の間には大きな差があります。詰まりを引き起こす主な要因は、次の3つです。
詰まりやすさを最も大きく左右するのは、実は配管の構造です。適正な勾配(水が自然に流れるための傾き)が取れていない配管や、横引き(水平方向の配管)が長い配管、曲がりが多い配管では、水結露水や汚れが配管内に滞留しやすくなります。また、ドレントラップ(臭いや虫の侵入を防ぐために水を溜めておく部分)は、構造上スライムが溜まりやすく、詰まりの起点になりやすい箇所です。こうした条件が重なる店舗ほど、詰まりが発生しやすくなります。
スライム自体は柔らかい膜状の汚れですが、そこに精肉・鮮魚のドリップ(食品から出る汁)や油脂、食品くず、ホコリ、値札・ラベルやラップの切れ端などが絡み付くと、それが芯となって塊が成長し、やがて管内をふさぐ「栓」に変わります。特に精肉・鮮魚・惣菜の平型ケースは、汚れが排水に入りやすいため注意が必要です。
冬場は店内の空気が乾燥するため、冷却器に付く霜が少なくなり、霜取りの際に出る水(除霜水)も減ります。その結果、ドレン配管に水が流れない時間が長くなります。
水が流れないと、管の底や曲がり部分に汚れが溜まった状態になります。そのまま乾燥が進むと、スライムが乾いて固まり、管の内側にこびり付いて、通常の水の流れでは落ちなくなります。
気温と湿度が上がる春から夏にかけては、除霜水が増えるとともに、固まった汚れを土台にして新しいスライムが重なり、急速に成長します。夏場に突然起きる詰まりには、冬の間に固まった汚れが関わっているケースが少なくありません。
配管の構造は、店舗側ですぐに変えられるものではありません。だからこそ、日々の運用で「スライムを大きく育てない・固まらせない」環境をつくることが、予防の最大の鍵になります。なお、改装や設備更新の際は、配管の勾配や掃除口の位置を見直す絶好の機会です。
清掃前の注意: ケース内を清掃する際は、商品を移動したうえで、取扱説明書の手順(電源やファンの停止など)に従って行ってください。運転中のケースに手を入れると、ファンなどでけがをする恐れがあります。
ポイント: 40℃前後のぬるま湯を定期的に排水口へ流し、管内の水を動かします。付着し始めた初期のスライムを押し流しやすくなります。特に除霜水が減る冬場や、勾配不足の配管には、意識して水を流すことが効果的です。売場のケースで行う場合は、商品温度への影響を避けるため、閉店後など商品を移動したタイミングで実施してください。
注意: 一般的な塩ビ製の排水管は熱に弱く、60℃を超えるお湯は、変形や継手の緩みの原因になるため、熱湯は使用しないでください。
冷蔵ケースについて: 小型の内蔵型ケースなど、機種によっては、排水を本体内の蒸発皿で処理しており、多量の水を流すとあふれる恐れがあります。実施前に、取扱説明書やメーカーに排水方式をご確認ください。
ポイント: 多くの冷蔵ケースでは、底板の下にドレンパン(冷却器から落ちる水や汚れを受ける皿)と排水口があります。ここに溜まったゴミやドリップ汚れは、スライムの栄養や「芯」の発生源です。取扱説明書の手順に従って定期的に清掃し、あわせて排水口の目皿に溜まったゴミも取り除きます。目皿を外したまま作業すると、ゴミがそのまま配管へ流れ込むため、注意が必要です。冷却器まわりなど分解が必要な箇所は、年1回以上を目安に専門業者による点検・清掃をおすすめします。

ポイント: ハニカムは冷気を整えて吹き出し、商品の前面に「エアカーテン(冷気の壁)」をつくる部品です。ホコリで目詰まりすると、エアカーテンが乱れ、店内の暖かく湿った空気がケース内に入り込みやすくなります。その結果、冷却器に霜が付きやすくなって冷えが悪くなるほか、ハニカムから落ちたホコリが吸込口から冷却器・ドレンパンへ運ばれ、スライムの栄養や「芯」になります。取り外せるタイプは、水洗いした後によく乾かし、向きを確認してから戻してください。定期的な清掃が、冷却効率の維持と詰まり予防の両方につながります。

ポイント: 吸込口は、ケース内の空気が冷却器へ戻る入口です。スリットにホコリが溜まると、冷却器やドレンパンへホコリが運ばれやすくなるうえ、空気の流れが悪くなり、冷えにくくなります。こまめに清掃することで、スライムの発生抑制と冷却効率の維持につながります。また、スリットに落ちた値札やラップ片は取り除き、積付限界線(ロードライン)を超える陳列やPOPで、吸込口をふさがないよう注意しましょう。

日々の清掃と定期的な点検を積み重ねることで、突然の水あふれや緊急対応にかかる費用を減らすことができます。さらに、冬の間に固まった汚れが夏の詰まりにつながる前に、春先に専門業者による高圧洗浄で配管内をリセットしておくと安心です。
株式会社美道(TENPO RESCUE)では、冷蔵ケースのドレン配管をはじめとする排水設備の点検・高圧洗浄から緊急対応まで、「お店を止めない」ためのメンテナンスをご提案しています。お気軽にご相談ください。